雁ヶ腹摺山・姥子山
寒気と暖気がぶつかるため不安定とされた予報のもとで、どの山を選ぶべきか? さすがに、八ツや谷川岳を選ぶ勇気はなかった。前からやってみたいと思っていた長沢背稜〜雲取山のトレイルランニングは、路面の状態から考えてむずかしそうである。直前まで登る山を決められないのは筆者の悪癖なのだが、以前から登山地図をみていて、行きたいなあと思っていた破線ルートに気付く。それが、雁ヶ腹摺山への縦走路である楢ノ木尾根である。しかし、上和田から登るのではちょっと面白くない。大峰から、ずっと下のほうへ伸びている尾根がある。この尾根には、国土地理院の地図によると、道があるようであるが、登山地図では「登山道でないその他の道」となっていて、かなりの難コースの可能性も考えられた。が、静かな(静か過ぎる?)山歩きが期待できることは間違いがなく、この道を選ぶことにした。
東京発4:39の総武線始発に乗ってゆくと、猿橋の駅に6:34に着くことができる。休日は猿橋駅からの直接のバス便はなく、10分ほどかかる富士急山梨バス猿橋営業所まで歩いてゆくことになる。ここから竹ノ向行き6:45のバスに乗ることができる。営業所前バス停からこのバスに乗ったところ、乗客は筆者以外にはいなかった。このバス、ふつうは権現山に登山するひとくらいしか使わない路線であるから(権現山にここから登る人も超少数派だと思うけれども)不審に思われたのも無理はない、運転手さんから「このバスでいいんですか?」と聞かれ、さらに「どこで降りるのですか?」の質問に、「下瀬戸です」と答えて、納得されたようだ。さらに、「どこへ登るんですか?」に対しては「雁ヶ腹摺山です」と答えたが、どう思われたかはわからない。確かに、このバスの進路にある上和田からは、いちおう登山道は延びていることになっているのだが。
金龍寺という寺のところで降りるつもりだったが、下瀬戸の次に金龍寺前というバス停があるので、そこで下車した。もちろん道標などがあるはずもなく、取り付きを探すのに少々苦労したが、金龍寺の前を横切る車道を上がってゆくと、それらしきものを発見することができた。機械で切り開いたような道らしきものがついているが、もちろん最近人間が歩行したような跡はまったくみられない。この切り開きが歩きにくかったので、尾根をまっすぐゆくことにする。こんな調子では目的地に着くのは何時になることやら、と思っていると、しばらくして672mピークに到達した。ここにはNHKの中継所があって、ここから北上する尾根にははっきり踏み跡らしきものが認められ、ほっとする。
710mピークを過ぎると道はますます明瞭になるが、展望はまったくない。降雨と下草のために早くも靴は浸水状態である。この道、ところどころに尾根を巻く道がつけられているが、その道は無視して尾根通しに進むのが吉なようである。1129mピークには「水無山」という、大月市が整備した標識が立っていて、ここから先は上和田からの道が合流して歩きやすくなる・・・はずだった。
しかしここから先が問題だったのである。確かにいっときはトレイルランできそうな緩やかな尾根が続いた。ところがそこからはヤブの連続だった。正確に言うと、道は明瞭だが刈り払いが不十分で、道の両側からスズタケだの潅木だのが道を塞いでいるのである。バラがほとんどなかったのが救いだったが、ひどいところは正面突破はできず、後ろ向きになって進んだ。
大峰山頂で昼食。アブ、ヤブカがうるさいので早々に出立する。ここで改めて地図を確認したいところだったが断念する。ここからはほぼアップダウンは少なくなり、登り一方となってゆく。途中で二度送電線の鉄塔を越えるが、そのときだけ一時的に道はよくなり、送電線の巡視路を越えてしまうとふたたびヤブとなる繰り返しである。特に大樺ノ頭の直前のヤブはひどく、途中で進めずに立ち往生してしまうことが二、三回あった。
大樺ノ頭に着いてしまえば、あとは明瞭な尾根道である。ここから、雁ヶ腹摺山までの間は「急坂」とあるが、ここまでのアップダウンに比べれば楽なものである。そして、こんな天候の日を選んだ甲斐あって、山頂には誰一人としていなかった。現金なものである。山は展望がすべてではあるまいに。ちなみに、ここに到る縦走路は展望皆無だった。おそらく、大峰から大樺ノ頭の間は、晴天であれば雁ヶ腹摺山や姥子山が見渡せるはずである。
さて、当初は大岱山を越えるコースを考えていた。しかしさすがにこの時間からでは日没近い時間になってしまいそうである。ここは無難に金山鉱泉へ降りるコースを選ぶこととする。しかし、ここまでせっかく来たのだから、展望はまるで期待できなくても、姥子山には寄り道することにする。
ここからの「登り尾根」の道は、まったく登りには不向きな道である。ひたすら急坂を一気に駆け下りるコースであり、このような雨の日には十分注意して下るべきである。金山峠から金山鉱泉へ降りるコースも同様であり、登りに取るのはあまり勧められない。ここまで来てしまえば、山口館を経て金山の集落へ着くのはもう指呼の間である。
遅能戸のバス停に着いて、愕然とした。帰りのバスがない・・・しかたなく、ここから大月の駅まで歩いて帰る。よく考えれば一時間の道のりである。とりあえず今回はこんなところで。






