じつは、本屋に行ってかなり大量の購入(と発注)をしてきた際に、頂き物のQUO cardを使って音楽CDを買うことを思いついた。QUOcardはHMVで使用できるのである。
別のところでも書いた通り、近年のCDリマスタリングの技術は目覚ましいので、'00以前にリマスターされたものなど買う気がしない。せいぜい20bit以上のオーバービットリマスタリングとか、できればルビジウム・クロックなどをつかってカッティングしてあるほうがいい。さいきんではCDプレイヤーの方にも精度のたかい水晶発振子がもちいられているようだ。
そこで、ソニーがリマスターしたグールドのバッハ(じつはこんな基本コレクションを持っていないのである)を探していたときに、「音質改善盤入荷」と書いてある、12枚組のCDをみつけた。それがこんかいのテーマのグルダ/ベートーヴェンピアノ曲集(全ソナタと全協奏曲)だ。ソナタは'68のアマディオ、協奏曲は'71と'73の英デッカの録音である。お値段はしめて4900円。随分安いものだ。
まず、ソナタをかけてみる。たしかこの録音はあまりよくないものとして知られていたと思うが、ほとんどノイズが聴こえない。ピアノじたいもよく撮れているようにおもう。録音じたいとしては優に及第点を与えてよいものと思った。さて、かんじんの演奏のほうだが、意外によい。意外にと書いたのはこのひとのモーツァルトはあまり感心しないできだったからである。バックハウスと同じベーゼンドルファーをつかっている。ウィーン出身ということではブレンデルと共通するが、知性派のブレンデルとちがってスタイルはむしろバックハウスにちかい。壮年期の録音だけにテクニックはよいが、さすがにピアノの音質のうつくしさはバックハウスに軍配があがるだろう。ギレリスのような変なくせやポリーニのような非人間性もなく、高水準の演奏だとおもわれる。バックハウスとどちらを採るかむずかしいところであり、この値段を考えれば文句なくお勧めできる。
また、コンチェルトのほうがさらによい。この時代の英デッカの録音には何の不満もない(バックハウス/ベームの'68のブラームス録音と同じと考えてよい)。指揮はホルスト・シュタインだが、例によって指揮者不在のウィーン・フィルとみなせば何の不満もない。これもバックハウスと並ぶ出来だと思われる。ただ、ソナタにせよコンチェルトにせよ、バックハウスとけっこう同質のものだけに、とくべつなファンというわけでなければどちらかを持っていればよいと思われる。どちらかというなら値段の点からグルダに軍配があがるか。