
世の中から不公平や不平等がなくならないのは、どうしてか。
それは、端的に、その不公平や不平等自体が、それを持続させる構造を形成しているから、というのが、今の筆者の答えである。
もう少し具体的に書こう。たとえば、住民の51%に利益をもたらし、49%に不利益をもたらすあるプロジェクトは、過半数の賛成を得て進められる。これが、もし政治の世界でも同じことが起きているとすれば、その51%はその不公平(搾取)のゆえに、常に多数派を獲得できる、ということになる。
これは極めて単純な推論であり、結論であるが、じっさいの世の中で生じていることは、ある政策(というより、政府の政策の全体)によって、利益を受ける層は、人数的にはごくごく少数であるにも拘らず、その構造が強固なものとして持続している、というものである。
これは、筆者の先ほど示した単純な多数決では説明できない問題だ。やはり、「不平等ゆえの安定性」という論点を、さらに突き詰めてゆくことである程度はそれは解決可能であるように思われる。
一つだけ筆者が言いたいことを例示しておけば、「身分制」の存在だ。この日本においても、さまざまなかたちで「身分」は残存しており、社会の中では無視できない存在になっている。そして、生まれながらの「身分」の他にも、後天的に獲得できる「身分」(学歴、会社、習い事の段位、収入 ...)もたくさん存在し、「自分は社会の序列の中でどのくらいに位置するのか」ということを気に掛けているひとびとは多いと思われる(最近の「下流志向」などは、どのように説明できるのか筆者にはわからないが、古典的にはこれでよいだろう)。
序列を気にすることは、必ずしも上昇志向のせいではない。むしろ、「序列化される」こと自体のほうが大切なのではないだろうか。人間に序列はなく、人種にも優劣はない、というリベラルな人間観を持つよりは、自分がいかなる序列に位置づけられようとも、序列が存在して、自分がその中で確固たる順番を占めていることに安心感を見いだすメンタリティが洋の東西を問わず、現代に至るまで存在してきたのではないだろうか。
そして、いわゆるリベラルな、民主的な社会が形成されないのは、そこに原因のひとつがあり、それよりも、序列化された、不平等な社会への志向のほうが強いのではないだろうか。
それについてさらに書きたいことはあるが、また次に譲る。
昨日の購入
ガルシア=マルケス「族長の秋 他6篇」新潮社
グレアム・グリーン「第三の男」早川書房
鶴見俊輔篇著「日本の百年1 御一新の嵐」ちくま学芸文庫
藤沢周平「たそがれ清兵衛」新潮文庫
花田清輝「随筆三国志」講談社文芸文庫
チャルマーズ・ジョンソン「帝国アメリカと日本 武力依存の構造」集英社新書
網野善彦「歴史としての戦後史学」洋泉社
まったくバラバラな気がするが、気のせいだろう。しいていえば、映画の原作が多いくらいか。岩波書店から、「網野善彦全集」の刊行が始まったようだ。買ってもいいけど、すでに文庫などで大量に持っているからなあ。
>上記が衰退すれば平等の社会へ移行するその繰り返し
いまの筆者は、いや、たぶんものごころついてから、筆者はこのような進歩史観を取ったことがありません。むしろ、世界は誕生のときから堕落し続けているという衰退史観に慣れ親しんできました。これは、論理的なものというより、好みの問題です。
ヨーロッパでも、シュペングラーの「西洋の没落」など、特に両世界大戦の戦間には、このような史観が流行しました。しかし、基本は進歩史観だと思います。この進歩史観が最初にあって、ポストモダンのような進歩史観への反省が出てくる、これは筆者にはとても「西洋的」であるように感じられます。
>でも正直者がバカをみないことを願いつつ
ヨーロッパでも、フランスでサルコジ内相が大統領になってしまいました。これでヨーロッパは消滅したとも一部で囁かれていますが、親米を標榜する彼らが信奉する新自由主義、新保守主義こそ、貧富の格差を開大させる原因となっていることは、もはや自明であると思われるのに、「正直者」は自分たちの富を減少させる小泉=安倍の政策を支持し続けています。
正直者がバカをみない世の中は到来しないと思われます。なぜなら、チョムスキーが指摘しているように、大衆がメディアを掌握することは絶対にないからです。この構造が続く限り、不平等も中産・無産階級の搾取も進行してゆくことでしょう。
#だからといって共産主義がその解決策にならないことも自明ですが。
コメント (1)
>序列化された、不平等な社会への志向のほうが強い
以前世界史の好きな人から、上記が衰退すれば平等の社会へ移行するその繰り返しだと言ったことがありました。
現在の私はネットの恐ろしいほど自由な感覚を知ってからは、「分相応」にと自制することを覚えました。今は良くないのかもしれませんが、不平等な社会の方が何か安心できる気がします。でも正直者がバカをみないことを願いつつ。
妙にカフカの「城」の前半を思い出してしまいました。
投稿者: 65億分の一 | 2007年05月20日 13:47
日時: 2007年05月20日 13:47