文献のまとめ。まだ、ターニングポイントとなる2000年Palmerの論文は未読である。1981年の基本論文と、1989年のTFCC損傷について述べた論文である。
1981年の論文の骨子は、軟骨成分である三角軟骨およびメニスカス類似体と、その周囲の靭帯成分(遠位橈骨ー尺骨靭帯、尺骨ー月状骨靭帯、月状骨ー三角骨靭帯など)が、解剖学的には一体の構造物であると認められること、機能的にも遠位橈骨ー尺骨関節の安定化、尺骨への重量伝達(手にかかる荷重の20%は尺骨で支えられる)、スムースな回内・回外運動の形成などの役割を、協調して果たしていることより、「三角軟骨線維複合体」(TFCC)と捉えるべきことを説いたものである。この論文をきっかけに、TFCCの機能およびその障害が着目されることになった画期的論文ではあるが、臨床情報はここには含まれていない。ただ、「10代までは損傷はほとんどみられない、60歳を越えるとほぼ100%に変性が認められる」と、加齢あるいは使用による影響を受けやすい組織であることを述べていることに着目すべきである。
1989年の、引用頻度のきわめて高い論文は、TFCC損傷の分類について述べたものである。この時点ではまだPalmerは臨床的に問題となることが多い外傷性(class1)の症例をそれほど診ていなかったようである。また、関節鏡が手に関してはまだ黎明期であったことからも、治療についてはほとんどコメントがない。「class2損傷(老化)のほうが多い」と彼は述べている。当然、class2損傷では、TFCC以外の、尺骨、手根骨自体にもびらんや変性が起きてくることが重視されて、骨の損傷の程度によるクラス分類となっている。
われわれが注目するのはclass1(外傷性)の損傷である。class1Aはavascular(血管がない)な軟骨板の穿通性外傷である。これは、血管組織がないために、理論的には治らないことになっている(関節液を通じて栄養物質が供給されて自然治癒しないとは言いきれないが・・・)。興味深いのは、治療として「軟骨の部分切除」(debridement)でよくなることがある、と記載されていることである。現在も、class1A損傷には部分切除が試みられているが、「穴が小さいと症状が出て、穴を広げると消失する」理論的根拠は不明である。
class1B, 1C, 1Dはそれぞれ尺骨遠位端(茎状突起の骨折を伴うこともあり)、TFCC遠位端(三角骨や小指基節骨への付着部)、橈骨遠位端(sigmoid notchの骨折を伴うこともあり)の損傷である。理論的には、それぞれの損傷部を縫合することで治りうる(じっさいにはそんなに簡単にはいかない)。しかし、血行はそれなりにあるために、保存的治療で治る可能性もあるが、Palmarは「尺骨のnormal/plus variant」という重要な着眼点を提出している。「尺骨が橈骨と等しいか、橈骨よりも長いと治りにくかったり再発する」ということである。plus variantでは、Palmerはclass1損傷では尺骨短縮術を、class2では尺骨遠位端切除術を推奨している。
まあ、class2損傷のほうが治療がむずかしいのは、当たり前だよなあ。