2000年になると、我らがPalmer先生も、かなりTFCC損傷の臨床経験を積んだ形跡が伺える。2000年の "Hand clinics"に載ったreviewでは、同僚のDr.Daileyがfirst nameの論文で、かつathleteに特化した内容ながら、早期からの積極的な関節鏡治療の可能性について述べている。
ただし、本論文でも、「アスリートでない一般人は、いかなるタイプの損傷であっても、8w-12wの "immobilization" 、つまり安静が治療の基本であること」を再三述べている。それを断ったうえで、「一刻も早くトレーニングに復帰したい運動選手では、早期の関節鏡治療もありうる」というのだ。でもこれは矛盾ではないだろうか。「一刻も早く日常生活に復帰したい」のは、一般人であっても同じだからである。
本論文では、Palmer分類毎の治療の方法を詳細に述べており、参考になる。簡単にまとめよう。
・Palmer1Aでは、articular disk(関節円板)損傷部のdebridement(切り取ってキレイにすること)を行う。新しいデバイスとしてYAGレーザーメスと "electrothermal wand" の二つがあるとのことだが、Palmer先生たちはレーザーの経験がないらしい。「このタイプの損傷は、術後一週間の安静が終わればどんどん動かしてよい」らしい。これは、関節円板には血管がないため、安静期間を置いても改善することが期待できないかららしい。
・Palmer1Bは、まず「合併する滑膜炎を切除し、損傷部をdebridementしたのち、「軟骨修復キット」のようなデバイスを使って切れた靭帯を縫合する」ようだ。尺骨とTFCCを直接縫合することはせず、ECU tendonの腱鞘(およびulnar capsule ... 尺骨頭の関節包のことか?)とTFCCの損傷部の橈骨側を結ぶようだ。この部位は血管が比較的豊富であるため、縫合後組織の着きがいいらしく、6wの術後安静が推奨されている。
・Palmer1Cは、この時点では「内視鏡的に再建に成功した報告はない」とのことだが、のちに報告が上がってくる。しかし技術的には難しいようで、日本の岡山大からの報告でも1C病変に関してはdebridementのみにとどめている。やはり骨に直接縫合はせず、腱鞘とTFCCを結ぶようである。
・Palmer1Dはもっともダイナミックな手術である。橈骨に釘を打ち込むもしくはwireを通して、直接TFCCと橈骨を結んでしまう修復の方法である。
安静日数および手術の手技の選択は、組織の血行と大いに関係がある。Palmer1A, 1D損傷は、基本的にavascular(血行に乏しい)部位の損傷であり、debridementにとどめるか、がっちり物理的に(腱の自然回復を期待せずに)再建するのに対し、血行がそこそこある1B, !C損傷では、縫合部が安静によって修復されることを計算に入れ、「骨を削ってワイヤを通す」といった侵襲性の高い方法は用いないようである。
2A〜2Eについては省く。実際にはrepairはせずにdebridementのみとする症例も多いはずだが、athlete、つまり術後も手首を酷使することを前提にrepairを中心に述べてあると思われる。