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忘れられた思想家・堺攘夷始末

 さいきん読書量がめっきり減っている。環境が変わればまた復活するのかもしれないが・・・

最近の読了
 H.E.ノーマン「忘れられた思想家(上下)」岩波新書 B2
 大岡昇平「堺攘夷始末」中公文庫 B2

 両方ともふつうの評価である。

 H.E.ノーマンは、カナダの歴史家・外交官である。悲劇的な自殺をしたことで知られている。本書を読むまでは、筆者は安藤昌益という思想家は、主に老荘思想の影響を受けた神秘思想家だと思っていたのだが、それはまったくの誤解で、徹底した農本主義の観点から、農民に寄食する武士=政治家を徹底的に弾劾し、それだけではなく自ら物を作り出すことのない商人に対しても仮借ない批判を浴びせる、そういう人物であったことがわかった。
 しかしだ。
 この現代においても、昌益の時代と全く同じ現象が生じている。いやもっとはっきり述べれば、中国の古代からこの「農本主義」思想は、真っ当な思想だと認められながら、ほとんどそれが有効な政策として打ち出されたことはなかったのだ。それほど経済において物資の取り引きは重要であるということだ。商社や金融重視の経済体制が現代日本の国力を削いでいるということはすでに指摘されているが、では再び農業や製造業立国にできるのか? 答えはノーである。手っ取り早く楽に金を稼げる(と言い切ってしまうと、それはそれで嘘であるけれども)業界に人材が流れるのは理の当然であり、学業は大変でかつ薄給の製造業を目指そうという人材は希少種になってゆくのは当たり前ではないだろうか?
 筆者が思うに、2000年前から解決できない問題が、この現代に簡単に解決可能なはずはない。モノを作って儲けるという行為の衰退は避けられないのではないか。

 大岡昇平の本作、正直言うと、著者のこの事件に対する思い入れがどこから来るものなのか、筆者にはよくわからなかった。森鴎外からはじまり多くの作家に取り上げられている題材だからなのか? 著者の「天誅組」などはとても面白いし、実によく調べ上げられているという印象を受けるのだが、本作はそれほど面白いとは残念ながら感じられなかった。

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2010年03月20日 21:44に投稿されたエントリーのページです。

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