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厳冬期笊ヶ岳再訪(1)

 昨年、二月の末にランカン尾根から初登頂を果たした笊ヶ岳に、最も代表的な登山道である雨畑ルートから登ってきた。

 一昨年末に奥秩父・和名倉山から将監峠〜飛竜山に登った際には、ワカンは必要ないものの、登山靴がざっくり埋まってスパッツが必要なほどの積雪があった。今回はロケーションや季節から奥秩父と同等くらいの積雪を予想して行ったので、ワカンは持参しなかった。一日目に布引山に上がって、二日目に伝付峠まで抜けようという計画である。

 幸か不幸か、身延〜奈良田の山梨交通バスは昨年12月31日をもって廃止になってしまった。そのかわり、早川町による代行バスが運行することになった。それに伴い、今まで便のよくなかった大島〜雨畑の乗り合いタクシーも、身延〜奈良田のバス便に接続するようになった(要予約)。そこで、公共交通機関を使って(さいきん、自家用車がなければ登山ができないような風潮がいろいろなところではびこっているが、登山という自然を愛するスポーツをするなら、可能な限り自家用車の使用は避けるべきだろう、というのが筆者の考え方である。もちろん、筆者じしんクルマの運転をしないという事情もあるが、それでもできる限りタクシーの使用は避けたいと思っている)馬場(ばんば)まで移動することが可能だ。8:10という、何とかぎりぎり実用時間に到着できる。

 そこから老平を経て、沢沿いの林道を歩いてゆく。林道の最後のところで道が二岐に分かれ、どちらを行くべきか標識上ははっきりしないが、右の道をゆくと、まもなく登山路にさしかかる。
 ここの沢沿いの登山路が台風で落ちているために、早川町は公式には登山禁止にしているのか、と想像していたのだが、ここは問題なく通れる。しかし、である。ここは何箇所か崖側から水が流れている箇所があって、そこが冬季だと凍結している。あきらかに一箇所アイゼンを付けないと歩けない箇所がある。じつはこの沢沿いの平坦なへつりが最も危険な箇所であった。

 広河原の徒渉も、ポイントを替えて靴のまま渡る。マーキングのところはやはり凍結していて渡りにくく、多少下流へ移動したほうが安全である。広河原到着が10:40頃で、無雪期ならともかく積雪期に布引山まで歩くのは少々厳しく、桧横手山あたりでの幕営も考えた。この後は水場は存在しないため、翌日分も含めて8Lほどの水を背負う。いざ勝負である。

 雪は非常に少なくスパッツ装用は不要であった。しかしあの尾根を登った、あるいは下ったことがある方ならわかると思うが、ここは劇坂が最後まで続くコースである。途中、積雪がやや増えて、斜面を上がるのに労力が必要になってから、一部分アイゼンを履いて歩くことにした。所々にワイヤーが散乱した跡あり。カラマツの植林も一部みられるが、ほぼ自然林の尾根である。標高1600mくらいからは針葉樹中心の林となってゆく。右手にランカン尾根を看つつひたすら登る。この尾根は男らしいというか、ほとんど下りがなく、登り返しがないために気分は楽である。桧横手山に到着したのは15時前であった。これなら布引山までは水平距離にして1.5kmほど、通常なら二時間くらいで着くはずである・・・が、まだ標高差は500mを余しているのである。しかし、期待したような、積雪によるテント適地はなく、上に登る以外の選択肢は考えられなかった。

 ここから2264m尾根に合流するまでがこの雨畑ルート中最も傾斜がきつい箇所である。しかし、特に合流直前の標高差100mほど、尾根のかたちが明瞭でない場所が最もきついのだが、ここはジグザグに道が切ってあり、地形図を見てのけ反るほどの急登ではない。ランカン尾根から登ってこの尾根を降りた時には、当然ながら雪のためこの道は見えず、「こんな急なところを下るのか!」と驚愕しつつ、文字通り転げ落ちたものであるが、そういう驚愕はこんかいはなかった。

 ここを過ぎて尾根に合流してからは登りの傾斜は緩み、やがて布引ガレが出てくる。こうなると占めたものだが、もう日は落ちて残照と月明かりで登るようになると、不意に頂上が現れる。午後六時を回ってしまった。予想はしていたが頂上には先客はだれもおらず。テントを張り終えたが風もなくしんとした夜であった。

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2012年01月11日 17:18に投稿されたエントリーのページです。

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